酪農家での「pen」の意味

penは有名な英文「This is a pen」で出てくる英単語。このブログ的には「This is supposed to be a pen」ですけど(笑)

いずれにしても筆記用具の「ペン」の意味ですね。

ただし、このpenには全く別の意味があるんです:

pen

家畜を収容するための囲い(囲まれた場所)、特に羊や牛。

An enclosure (enclosed area) used to contain domesticated animals, especially sheep or cattle.

つまり家畜が逃げないようにする「」のことですね。

柵の間から顔を出すヤギ
Image by Rainer from Pixabay

一昔、200年前とかは大部分の人類の職業は農家でしたからpenなんてのは当たり前の語彙だったのに、それが産業が第一次から移行するにつれ農家用語の使用頻度も影響を受けたのは面白い状況だと、有名童話『シャーロットのおくりもの』を読んだ当時思ったものです。

「bull」の意味

閑話休題。ところで、bull(ブル)は「雄牛」の意。飲料品レッドブルのマークが2匹の赤い雄牛であるのにはちゃんと理由があるのでした(笑)

従って、bullpenは自ずと雄牛の囲いの意味であることが分かります:

bullpen

雄牛を留めるために使われる囲まれた場所。

An enclosed area used to hold bulls.

野球でピッチャーが投球練習する「ブルペン」の語源

すると、野球用語でのブルペンの語源も容易に想像がつくわけです。リリーフ投手をブル(雄牛)に見立てて、その投手たちが収容されている場所という意味でbullpenじゃないかと。

https://youtu.be/l0v2V6IYaZ0 [Credit: Yu Darvish]

ところがどっこい、野球のブルペンの語源が正確に分かってないのが、この話のなかなか面白いところ。たった百数十年前に出てきた単語なのに、どうやって形成されたか今もって分からないなんて。スラング的に一部で使われ出して広まったけど、もともとどうしてブルペンなのかは謎のままなんですね。誰か言い出しっぺに聞いとけよ・・・(笑)

一応、このブルペンの語源にまつわるセオリーが何種類かあって、それが紹介されているESPNの以下の記事の中からいくつか紹介したいと思います:

Why are pitchers kept in a "bullpen"?

これは非常に物議を醸す議題だ。

This is a very contentious issue.

語源1.ブル・ダラム・タバコの看板説

Why are pitchers kept in a "bullpen"?

当時、ほぼ全ての球場にブル・ダラム・タバコの看板が設置されていたんだ — 巨大な雄牛の形の広告板だ — 外野の壁に設置されていた。全ての試合は日中行われた。そしてリリーフ投手たちはその雄牛の影でウォームアップをしたんだ。いつからか、その場所はブルペンとして知られるようになった。

At that time, nearly every ballpark in the country featured a Bull Durham tobacco sign – a giant bull-shaped billboard – affixed to the outfield wall. Smokin’. All the games were played during the day, and relievers warmed up in the shadow of the bull. Over time, that area became known as the bullpen.

これは実際のブル・ダラム・タバコの広告を見てみれば、その雄牛の感じが分かるかと思います:

確かに、この巨大な広告板が影を作ればブルペンくらいは覆うのかもしれません。球場の場所(緯度経度)や方向、看板の設置位置、ブルペンの場所、季節、太陽の位置によって全ての球場でブルペンがこの雄牛看板で隠れた保証はありませんが、一部の球場では偶然にもリリーフ投手の練習する場所が毎回隠れることから、地元ファン(あるいは選手自身)によりスラング的にその影の場所をブルペンと呼ぶようになる。そしてそれが広まる。なかなかおもしろい理論ですね。

語源2.遅れて球場にやってきた観客の場所説

語源1はリリーフ投手の存在ありきですが、リリーフ投手が確立される以前からブルペンという用語はあったみたい:

Why are pitchers kept in a "bullpen"?

リリーフ投手は1890年代に入るまで実質知られていなかったし、そして「ブルペン」は早ければ1870年代には既に使われていた。実はブルペンはファールゾーンのロープで囲まれた場所を意味し、遅く球場に来たファンが試合を観戦する場所だった。リリーフ投手が確立されるにつれて、この用語ブルペンはファンが立ち見するための場所からピッチャーがウォームアップするための場所に移り変わったんだ。

Relief pitching was virtually unknown until the 1890s, and “bullpen” was in use as early as 1870. It referred to the roped-off area in foul territory from where late arriving fans could watch the game. Moooo! As relief pitching developed, the term bullpen transferred meaning from a place for fans to stand to a place for pitchers to warm up.

つまり、元々は遅れてやってきた観客を収納する場所で、ロープで囲ってあったからペン。でもブルはどこからかな? 観客が熱烈ファンで獰猛だったのかもね(笑)

野球を感染する観客
Image by Keith Johnston from Pixabay

語源3.牛とは関係ない説

最後の説が基本とするのは、当時ブルペンという用語は既に比喩的にしか使われなかったという点:

Why are pitchers kept in a "bullpen"?

「ブルペン」は大抵の場合比喩的に使われる、オスの牛の柵ではなく。初期、1850年前後ではブルペンは色々なものの囲いを意味した、もっともよく知られていたのは囚人を収容するものだ。でも、どうしてブル? 安全のため、囚人たちは危険で収監する必要があるので囚人にブルを当てるのは納得できる。でもリリーフ投手が危険な証拠はないよね。

“Bullpen” is almost always used metaphorically, not in reference to a pen for male cows. Curious. In early usage, around 1850, it referred to a variety of enclosures, most commonly ones in which prisoners were confined. Why bull, and not, say, pig? It makes sense for prisoners, in that they’re dangerous and need to be confined, like a bull, for safety’s sake. But there’s no evidence that relief pitchers are dangerous.

簡単に言えば、1850年にはブルペンと言う用語は牛とはもうpun intended)関係なくなっていて、単なる囲いの意味で使われていたってこと。そこから、リリーフ投手の居る囲ってある場所をブルペンと呼んだ説。記事には刑務所だってブルペンと呼ばれたとありますね。この説はちょっと微妙かな。

以上、野球用語「ブルペン」の語源3つの説でした。

bullpenは更に発展して準備・プロジェクトチームの場所へ

ブルペンは更に進化し、イディオム的に準備の場所やプロジェクトチームが作業する場所を表すようになります:

bullpen

  • (比喩的に)誰かや何かが準備するための場所。
  • 開かれた席の配置、プロジェクトチームが公然と必要最小限の努力でコミュニケーションが取れる。
  • (figuratively) A place for someone or something to get ready.
  • An open seating arrangement where project teams can communicate openly with minimal effort.

次の『ベター・コール・ソウル』で、顧客からの電話がブルペンとジミーのオフィスに転送されると受付が述べてますが、ここのブルペンはまさにプロジェクトチームの居る場所の意味ですね。

受付: Every line starting with 7700 has been rerouted to the bullpen, plus your office.
『ベター・コール・ソウル』で、ジミーは広告を見たクライアントからの電話を待つ
Better Call Saul [Credit: AMC]

最後に

今回は「ブルペン(bullpen)」の語源と意味の変遷についてまとめてみました。雄牛の囲いから始まって、現代では会社内でプロジェクトチームが陣取る場所としても使われるんですね。

それにしても、野球用語としてのブルペンの語源が歴史の隙間に埋もれてしまったのは非常に惜しいことです。情報を残すにしても当時は活字になってないといけないわけで、現在のツイッターで呟けば記録して残る手軽さとは雲泥の差。もし当時ツイッターがあれば「あの場所ブル・ダラム・タバコの看板の影に隠れるからブルペンじゃんwwwピッチャーみんな寒そうw」みたいな草を生やしたアホなツイートがあったかもしれませんね。こんなもんでも、後世の歴史家が見れば語源が確定できるんですから侮れません。それでは〜